強制わいせつ罪強制わいせつきょうせいわいせつ

【強制わいせつ罪】180条1項
強制わいせつ罪は親告罪です

合意があると思っていても、女性からの訴えで合意がなかった強制わいせつ事件として弁護士の介入が必要となる刑事事件となることもあります。特にお酒の席では女性が酔っていたかどうかという問題も重要になります。(実際の事件と判決・処分例はこちら

強制わいせつ罪と強姦罪の違い

強姦(177条)強制わいせつ(176条)
行為13歳以上の女子13歳未満の女子13歳以上の男女13歳以上の男女
暴行又は脅迫を用いて※暴行脅迫は不要暴行又は脅迫を用いて※暴行脅迫は不要
姦淫することわいせつな行為をすること
法定刑3年以上の有期懲役6月以上10年以下の有期懲役
未遂罪未遂も罰せられる
親告罪か否か親告罪
準強姦準強制わいせつ(178条1項)
行為人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて
姦淫することわいせつな行為をすること
法定刑3年以上の有期懲役6月以上10年以下の有期懲役
未遂罪未遂も罰せられる
親告罪か否か親告罪
強姦致死傷罪(181条2項)強制わいせつ致死傷罪(181条1項)
行為強姦又は準強姦の罪を犯し、女子を死傷させたこと強制わいせつ又は準強制わいせつの罪を犯し、を死傷させたこと
法定刑無期又は5年以上の懲役無期又は3年以上の懲役
未遂罪既遂・未遂を問わず、犯罪に着手した後に致死傷の結果となった場合に成立する
親告罪か否か非親告罪

告訴について

告訴とは

被害者その他一定の者が捜査機関に対して犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示です。

強制わいせつ罪は親告罪です(180条1項)
【例外】

※2人以上の者が現場において共同して犯した場合には非親告罪です(180条2項)。
※強制わいせつの罪を犯して、致死傷の結果が生じた場合には非親告罪です(181条1項)。

強制わいせつ罪は、犯罪の性質上、起訴により公開の法廷で審理が行われると、被害者が証人として出廷する場合はもとより、被害者の捜査段階での供述調書が同意書面として取調べられる場合であっても、被害者の名誉が害され、精神的苦痛等の不利益が増大することを考慮するため親告罪とされています。

強制わいせつ罪になる行為とは

13歳以上の男女に対する強制わいせつ罪は、暴行又は脅迫を用いることが犯罪成立の要件となります。
では、「暴行」「脅迫」とはどのような行為をいうのでしょうか
「暴行」は、身体に対して不法な有形力の行使をすることです。
「脅迫」は、害悪を告知することです。

「暴行」の程度は

被害者が抵抗をできなくなる程の強度のものである必要はありません。
「暴行」と認められた行為としては、

  • 殴打(名古屋高裁金沢支判昭和36.5.2)。
  • 肩や着衣をおさえる行為(大判昭和8.9.11)。
  • 不意に股間に手を挿入する行為(大判昭和8.9.11)。
  • 衣服を引き剥ぎその裸体の写真をとる行為(東京高判昭和29.5.29)。
  • 被害者の抵抗を抑制する程度の抱擁(抱きつき行為)(大判大正13.10.22、高松高判昭和33.2.24)。
  • 女性の陰部に指を挿入する行為(大判大正14.12.10、大判大正7.8.20)。
  • 女性の意思に反して無理矢理接吻(キス)する行為(広島高裁松江支判昭和27.9.24、東京高判昭和32.1.22他)。

など、それ自体がわいせつ行為である場合にもみとめられます。

わいせつ行為は

わいせつ行為とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的しゅう恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する」行為をいうものと解されています(名古屋高裁金沢支判昭和36.5.2)。

強制わいせつ罪の捜査上のポイント

初動捜査のポイント

被害者等から、被害直後に被害申告がなされた場合

直ちに現場に急行し、被害者ないし目撃者等から犯人に関する情報(犯人の人相・服装・特徴はもとより、犯人が車両を利用していた場合には、そのナンバー・車種の特徴等)を得て、緊急配備するとともに、現場付近の検挙等が行われます。
現場付近及び犯人の逃走経路と目される付近において、聞き込み捜査を行い、犯行時刻ころに不審者を見かけた者や不審な物音等を聞いた者を発見するように捜査が行われます。

現場遺留品等の捜査

犯行現場及び逃走経路と思料される付近から犯人の遺留品を発見し、証拠化しようとします。
遺留品としては、
①犯人の所持品、特に刃物等の凶器を使用した犯行においては、当該凶器
②犯人が、車両を使用した場合には、当該自動車、自転車等
③犯人の遺留指紋、犯行が屋外の場合には、更に足跡の採取
④被害者の着衣等に遺留された唾液等の体液、血痕(犯人が負傷している場合)
 ↑④について、被害者から、被害当時の着衣、履物等の任意提出を受け、これらに犯人の唾液等の体液や血液等が付着していないか否かを検査されます。
仮に、犯人特定につながる遺留物が発見されない場合でも、被害者の着衣の損傷状況、土泥の付着状況を写真撮影するなどして証拠化することにより、後日、犯行態様につき、被害者と被疑者の供述が異なった場合には、有効に利用することが考えられます。

※遺留品については、

犯行1カ月後に告訴された強制わいせつ事案について、犯行当時の犯行現場に赴いたとしても既に遺留品が採取できるとは限られませんし、なにか遺留品と目される物を発見できたとしても、犯行当時から適性に保全されたものではないため証拠として用いることは難しくなるでしょう。
被害者の着衣等についても同様で、時間が経過すれば既に処分している可能性も高くなり、洗濯をするなど当時の現状を留めていないことが多くなります。かりに、そのままの状況で残っていた場合であっても、経年劣化は免れませんし、なにより適性に保全していたことの証明は困難です。

目撃供述について

目撃供述については、信用できるものかどうかが十分に吟味されなければなりません。
特に強制わいせつ罪や強姦罪は、深夜敢行されることが多く、また、被害者は驚愕と恐怖のために、犯人について十分な観察ができていない場合も多いとされているので、目撃供述を捜査機関が聞き取る際には慎重にしなければならないとされています。

目撃供述は、犯行後、最初の目撃供述が決定的な意味を持つ場合が多いので、緊急配備等のためにとりあえず犯人の特徴等を聞いた後に、最初に目撃状況を聴取するときが重要とされます。

警察が意識する手順と留意点は以下です。

①犯人の特徴に関する供述を聞く
犯人の身長、体格、人相、特異な身体的特徴(身体の欠損や傷跡、入墨等)、声の特徴、着衣の特徴(色に関する特徴よりも形状に関する特徴の記憶が鮮明で正確なことが多いとされています)、時計・メガネや装飾具の有無・形状のほか、逃走に使用した車両の特徴等が具体的に聴取されます。
②目撃の条件に関する供述を聞く
現場の状況、照明の程度、目撃距離等のほか、被害者(目撃者)の視力や身体や精神の状況を具体的に聴取し、上記①の目撃供述の信用性につき吟味がなされます。
その上で、目撃現場における実況見分を実施して証拠保全を図られます。

その後、被疑者を確保した場合には、

③写真面割り等を実施する
面割り(犯人と被疑者が同じ人物かどうか(「犯人性」といいます。)を、写真を見せるなどして確認する捜査手法)に使用する写真は、可能な限り多数の対照写真を用意し、犯人の人相とあまりにかけ離れた者は除くとともに、同じ条件で撮影されたものを示すものとされます。
示す際には、必ず、「示した写真の中に犯人がいないこともあり得る。」旨教示し、誘導的な言動は慎み、被害者の記憶を十分に甦らせるように配慮することが信用性を担保するために必要とされます。

なお、被疑者との1対1の面通しは、顔見知りの場合や犯人に連れ回される等目撃時間が長く見間違えるおそれが無い場合を除いて避けるべきであるというのが警察の一応の方針のようです。

被疑者に対する取調べ

【取調べ】

①被疑者の妻帯の有無、犯行当時の性交渉(SEX)等の状況
②被害者を認めた状況及び犯行に至る経緯
等についてまで具体的に聴取されるようです。

【強姦未遂か、強制わいせつか】

本当は強姦をするつもりだったのですが、姦淫する前に射精してしまいました。逮捕罪名は強制わいせつ罪だったので、このまま強制わいせつ罪について裁判が行われるのでしょうか?

本当は強姦をするつもりだったのですが、姦淫する前に射精してしまいました。逮捕罪名は強制わいせつ罪だったので、このまま強制わいせつ罪について裁判が行われるのでしょうか?
強姦が未遂で捕まった場合には、強姦の意図を否認して強制わいせつのつもりであったと被告人が弁解することが多くあります。
未遂罪は「刑を減軽することができる」と規定されており(刑法第43条)、必ずしも減軽されるわけではありません。
強姦未遂であれば、法定刑は3年以上の有期懲役(刑法177条)を減軽させることができるとなりますが、有期刑の減軽はその長期及び短期を2分の1とします(刑法68条3号)ので、減刑される場合には1年6月以上10年以下の懲役となります。
強制わいせつ罪であれば既遂罪であっても6月以上10年以下の懲役です。
強姦未遂罪となるよりも強制わいせつ罪の既遂となる方が法定刑は軽くなります。そこで、強姦の犯意を否定して強制わいせつとなるような主張を行うのです。

しかし、強制わいせつ罪で逮捕された場合であっても、捜査を進めるうちに強姦未遂であると判断されれば、起訴の際に罪名が変わることはあり得ます。

姦淫するつもりはなかったと主張するだけで強姦の犯意を否定することができるわけではなく、被疑者、被害者双方から具体的な状況を聴取し、被疑者が被害者に接触を図った状況、暴行・脅迫の具体的態様、被害者に対するわいせつ行為についての具体的な態様、接触部位等について強姦の意図があったと言えるか否かを客観的に判断することとなります。
犯人が被害者の下着に手を掛けて脱がせようとした、犯人が暗がりに連れ込もうとした、犯人自身がズボンを脱ごうとしたなどの行為があれば、強姦の犯意を伺わせる行為と判断されます。
顔見知りの場合

犯人と被害者が顔見知りである場合には、同意があった旨主張がされることが多くあります。事件前の交際状況等について十分に聴取がなされ、被害者の承諾を推認させる状況があったかどうかが十分に捜査されます。

顔見知りでない場合

ナンパして意気投合したので大人の関係をもっただけ、という旨の主張がなされることがあります。
特に被害者が酔っぱらっていた場合には注意が必要です。酩酊している者に対してわいせつ行為を行うと準強制わいせつ罪に問わる可能性があります。
被害者の同意があったかどうかは、犯行の時刻や場所、周囲の状況、犯行に至る経緯や具体的プロセス、被害者の年齢や立場、性体験の多寡などによって総合的に判断されます。

捜索・押収について

強制わいせつ事案においては、被疑者宅の捜索がなされることが多いでしょう。
携帯電話やパソコンについては、余罪の有無を調べるために押収されます。
また、性的嗜好を示す物証についても捜索押収がなされます。特に被害者が幼児である場合には、幼児を性的対象とする嗜好を示す雑誌やビデオ、DVD、パソコンに保存された画像などが調べられ押収されます。

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強制わいせつ罪の弁護活動のポイント

被害者供述について

—被害者の調書についておかしな点はないか—

被害者は、犯人に対する憎しみ等の感情から、被害状況を誇張することがあり得ます。
被害者の身体の損傷や着衣等の汚濁・破損状況及び現場の状況などの客観的事実から事実と異なる点のチェックがなされるようです。
被害者の供述調書が複数ある場合には、供述の変遷の有無もチェックできます。裁判では検察官に有利な調書しか請求されないこともありますので、開示請求などをして被告人に有利な調書を引き出すことなども必要です。被害者は、驚愕と恐怖から当時の状況をあまり覚えていないということもあり得ます。捜査官から誘導されて供述をしている可能性もあり、供述の変遷は被害者供述の信用性を失わせる可能性がありますので十分吟味する必要があります。

幼児の供述について

捜査官の調書の作り方ついて

幼児の供述調書作成に当たっては、意味が通じる限り、被害児童が語った言葉をそのまま録取することが重要であり、供述内容を取りまとめた形式ではなく、一問一答式の供述調書を作成することが、信用性確保の意味で望ましいとされているようです。また、幼児の取調べの際に、気持ちを落ち着かせるために、母親等の保護者の立会人がつくこともあります。

幼児の供述調書については、

捜査官や母親等の立会人の誘導や影響を受けて、迎合するような供述であったり、不自然に鮮明すぎる記憶内容の供述がされていたりすることがあるかどうかを留意すべきです。

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強制わいせつ罪の統計

全国における強制わいせつ事件の発生状況

強制わいせつ認知件数・被害発生率の推移

平成女子男子
認知件数被害発生率認知件数被害発生率
13年9,04413.92820.5
14年9,22514.22510.4
15年9,72914.93000.5
16年8,91713.62670.4
17年8,53413.02170.3
18年8,14012.41860.3
19年7,46411.42000.3
20年6,92810.61830.3
21年6,57710.11110.2
22年6,86610.51610.3

警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による

※1.「被害発生率」は、被害者の性別人口10万人当たりの認知件数をいう。
※2.1つの事件で複数の被害者がいる場合は、主たる被害者について計上している。

13歳未満の子どもが被害者となった強制わいせつ事件 被害者数の推移

平成13歳未満の被害者数
全体うち女子の被害者数
13年2,0371,905
14年1,8151,689
15年2,0871,926
16年1,6791,519
17年1,3841,275
18年1,015911
19年907814
20年936839
21年936865
(92.4)
22年1,063975
(91.7)

警察庁の統計による

※1.1つの事件で複数の被害者がいる場合は、主たる被害者について計上している。
※2.( )内は、女子比

強制わいせつ事件における被疑者と被害者の関係

年代総数配偶者
(内縁含む)
実子養子継子兄弟姉妹その他の
親族
知人・友人職場関係者その他面識なし
2008年3,376286122172811643032,581
2007年3,38714953272721472732,646
2006年3,64616892132761443412,846
2005年3,68305912132341262903,003
2004年3,49633971121991403022,820
2003年3,75110351102151062493,160
2002年3,2690246010190912612,705
2001年3,802132509195852393,263
2000年3,484052524159872712,949

出典:警察庁統計による(吉川真美子著「女子のための「性犯罪」講義 その現実と法律知識」世織書房)

強制わいせつ罪の被害者の年齢

年代総数0〜5歳(計)6〜12歳(計)13〜19歳(計)20〜24歳(計)25〜29歳(計)
2008年7,111638732,7551,699842
75690783492,706131,68610832
2007年7,664688393,1141,860876
115782757513,063231,83717859
2006年8,326869293,5192,004894
157189840533,466131,9917887
2005年8,751931,2913,5861,941903
9841001,191583,528121,92912891
2004年9,1841121,5673,8261,875918
101021501,417633,763161,85912907
2003年10,0291151,9724,1461,915968
91061521,820984,048191,89613955
2002年9,4761011,7143,9701,879959
12891141,600743,896181,86116943
2001年9,3261201,9173,8121,825854
111091211,796993,713191,80613841
2000年7,412991,5692,9341,471736
7921331,436962,838231,4488728

強制わいせつ罪の被害者の年齢年齢別被害状況 30歳〜(上記の表の続き)

年代総数30〜39歳(計)40〜49歳(計)50〜59歳(計)60〜69歳(計)70歳以上(計)
2008年7,11161418251239
9605317924902309
2007年7,664620192512915
76135187447029015
2006年8,32661219064199
6606218816301909
2005年8,751668170642312
1265601701351023111
2004年9,184620169681910
106101168563118010
2003年10,029669146661616
36664142264016016
2002年9,476621148492114
46174144940021014
2001年9,326548146702410
554310136367123010
2000年7,41243011440811
8422159904008011

出典:警察庁統計による(吉川真美子著「女子のための「性犯罪」講義 その現実と法律知識」世織書房)

強制わいせつの認知件数は1999年から増加し、2003年には10,029件のピークに達しました。しかし、翌年の2004年以降は減少傾向に転じ、2008年には約3割減の7,000件近くまで減少しています。

なお、2011年は、認知件数が6,688件、検挙件数が3,563件、検挙率が53.3%となっております。

検察庁既済事件の身柄状況(平成21年)

罪名逮捕関係勾留関係
総数
(A)
逮捕
されない者
警察等で
逮捕後釈放
警察等で逮捕
身柄付送致
(B)
検察庁で逮捕
(C)
身柄率
B+C/A%
認容
(D)
却下
(E)
勾留請求率
D+E/B+C%
強制わいせつ2,912902281,979368.11.8955098.1

検察統計年報による(平成22年度版 犯罪白書)

起訴人員中の有前科者の人員・有前科者率・犯行時の身上(平成21年)

罪名起訴人員有前科者有前科者率犯行時の身上
執行猶予中執行猶予中(保護観察中)仮釈放中保釈中
強制わいせつ1,45256238.7%56(10.0)148(1.4)-

検察統計年報による(平成22年度版 犯罪白書)

裁判員裁判対象事件 通常第1審における科刑状況

罪名総数死刑懲   役
無期20年を超える20年以下15年以下10年以下7年以下5年以下3年以下
実刑執行猶予
単純執行猶予保護観察付
強制わいせつ致死傷9(73)-----------(8)-(4)-(10)2(13)3(19)4(19)

最高裁判所事務総局の資料による(平成22年度版 犯罪白書)

※( )内は、平成21年に通常第1審で終局した事件(裁判員裁判により審理されていないものも含む。)の人員である。

都内における強制わいせつ事件の発生状況(平成22年中)

時間別発生状況

警視庁HPより

強制わいせつ事件は、午前7時から午前8時までの通勤・通学時間帯と、午後8時から午前1時までの夜間の発生が多く、これらの時間帯に全体の5割以上が発生しています。

場所別発生状況
場所別発生状況

警視庁HPより

※「中高層住宅」とは、4階建て以上のものをいいます。
※「その他の住宅」とは一戸建ての住宅、中高層住宅以外の住宅で3階建て以下及びテラスハウスなどが含まれます。

年齢別被害状況

警視庁HPより

強制わいせつ事件の被害者は、いずれも20歳代が最も多く、次いで10歳代となっており、全体の約8割を占めています。
強制わいせつの被害者は20歳未満の女性が最も多く、2002年から2006年の5年間における性犯罪の認知件数は、13歳以上24歳以下の女性が61.7%を占めています(警察庁、2006年の「犯罪情勢」)。

これよりもっと年少の13歳未満の女子を被害者とする強制わいせつの認知件数は1997年以降増加し、2003年には2,000件近くに達しましたが、その後は減少傾向にあります。年少の男児も被害を受けやすく、13歳未満の男児を被害者とする強制わいせつの認知件数は2000年以降100件台で推移しています(法務省「2006年版犯罪白書」)
数は少ないですが、60歳以上の女性が被害者となることもあります。60歳以上が被害者となった強制わいせつの認知件数は毎年30人前後です。強制わいせつの0.3%が60歳以上の被害者です。
年少者の場合と同様に、高齢者が被害者となった事件は、抵抗力が低いことを狙った犯行と言えるでしょう。

参考
第176条(強制わいせつ)

13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第178条(準強制わいせつ及び準強姦)

1.人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2.女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。

第179条(未遂罪)

第176条から前条までの罪の未遂は、罰する。

第180条(親告罪)

1.第176条から第178条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2.前項の規定は、2人以上の者が現場において共同して犯した第176条若しくは第178条第1項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、通用しない。

第181条(強制わいせつ等致死傷)

1.第176条若しくは第178条第1項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
2.第177条若しくは第178条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は5年以上の懲役に処する。
3.第178条の2の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。

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強制わいせつ罪とは

通常の強制わいせつ罪については、
【13歳以上の男女に対して、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をすること】
【13歳未満の男女に対して、わいせつな行為をすること】

により成立する犯罪です。

“わいせつ行為”とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的しゅう恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する」行為をいうものと解されています(名古屋高裁金沢支部昭和36年5月2日判決)。

最終的には事案毎の判断にはなりますが、被害者の陰部を直接触れる行為や女性の乳房を弄ぶ行為、無理やりキスをする行為、自己の陰部を触らせる行為などは強制わいせつ罪のわいせつ行為に該当するとされています。いわゆる痴漢の場合には、被害者の下着の中に手を入れて直接性器を触る場合が強制わいせつ罪、服の上から触る場合が迷惑防止条例違反とされているようです。

詳細は「強制わいせつ罪になる行為とは」へ
強制わいせつ罪

強制わいせつ罪には、
強制わいせつ罪・・・・・・・・6ヵ月以上10年以下の有期懲役
準強制わいせつ罪・・・・・・・6ヵ月以上10年以下の有期懲役
強制わいせつ致死傷罪・・・・・無期又は3年以上の懲役

の規定があり、それぞれ未遂罪も罰せられます。

強制わいせつ罪の類型

強制わいせつ(176条)準強制わいせつ (178条1項)強制わいせつ致死傷罪(181条1項)
13歳以上の男女13歳未満の男女人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて強制わいせつ又は準強制わいせつの罪を犯し、人を死傷させたこと
暴行又は脅迫を用いて※暴行脅迫は不要
行為わいせつな行為をすることわいせつな行為をすること
法定刑6ヶ月以上10年以下の有期懲役6ヶ月以上10年以下の有期懲役無期又は3年以上の懲役
未遂罪未遂も罰せられる未遂も罰せられる既遂・未遂を問わず、犯罪に着手した後に致死傷の結果となった場合に成立する
親告罪か否か親告罪親告罪非親告罪

告訴について

告訴とは何でしょうか?

被害者その他一定の者が捜査機関に対して犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示です。

強制わいせつ罪は親告罪です(180条1項)。

【例外】

※2人以上の者が現場において共同して犯した場合には非親告罪です(180条2項)。
※強制わいせつの罪を犯して、致死傷の結果が生じた場合には非親告罪です(181条1項)。
強制わいせつ罪は、犯罪の性質上、起訴により公開の法廷で審理が行われると、被害者が証人として出廷する場合はもとより、被害者の捜査段階での供述調書が同意書面として取調べられる場合であっても、被害者の名誉が害され、精神的苦痛等の不利益が増大することを考慮するため親告罪とされています。

強制わいせつ罪は、なぜ、親告罪とされているのでしょうか?
強制わいせつ罪は、犯罪の性質上、起訴により公開の法廷で審理が行われると、被害者が証人として出廷する場合はもとより、被害者の捜査段階での供述調書が同意書面として取調べられる場合であっても、被害者の名誉が害され、精神的苦痛等の不利益が増大することを考慮するためです。
なぜ、2人以上の者が現場において共同して犯した強制わいせつの場合及び強制わいせつ致死傷罪の場合には非親告罪とされているのでしょうか?
被害法益の大きさ、罪質の重大さによる処罰の必要性という公益上の理由が、被害者の名誉の重視という理由に優先すると考えられるからです。
犯人がわからなければ告訴することはできないのでしょうか?
必ずしも犯人を指定してその氏名を明記する必要はありません。
しかし、犯罪事実については、概括的であっても特定し得る程度のものである必要があります。
告訴はいつまでにすればよいのでしょうか?
告訴期間はありません。
以前は、犯人を知った日から6ヶ月以内とされていましたが、平成12年の改正によって告訴期間が撤廃されました。
誰が告訴できるのでしょうか?
被害者、被害者の法定代理人、被害者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹、死者の親族および子孫、検察官の指定した者です。
13歳の少女の告訴は有効でしょうか?
告訴人が告訴の意味を理解する能力が必要です。しかし、性犯罪については、被害行為と処罰の意味をある程度理解できる年齢に達しておればよいと思われ、判例も13歳11月の強姦の被害者(最決昭和32.9.26)、13歳7月の強姦未遂の被害者(水戸地裁昭和34.7.1)について告訴能力を認めています。
※ただし、疑義がある場合、実務的には、親権者等の告訴状も併せて徴しているようです。
告訴と被害届は同じものでしょうか?
告訴は、犯罪事実の申告という報告行為と、訴追を求めるという請求行為との複合的な訴訟行為ですが、被害届は犯罪による被害の事実を申告することで、起訴を求める意思がない点で告訴と異なります。
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強制わいせつ罪になる行為とは

13歳以上の男女に対する強制わいせつ罪は、暴行又は脅迫を用いることが犯罪成立の要件となります。
では、「暴行」「脅迫」とはどのような行為をいうのでしょうか
  ⇒「暴行」は、身体に対して不法な有形力の行使をすることです。
  ⇒「脅迫」は、害悪を告知することです。

「暴行」の程度は

被害者が抵抗をできなくなる程の強度のものである必要はありません。
「暴行」と認められた行為としては、

  • 殴打(名古屋高裁金沢支判昭和36.5.2)。
  • 肩や着衣をおさえる行為(大判昭和8.9.11)。
  • 不意に股間に手を挿入する行為(大判昭和8.9.11)。
  • 衣服を引き剥ぎその裸体の写真をとる行為(東京高判昭和29.5.29)。
  • 被害者の抵抗を抑制する程度の抱擁(抱きつき行為)(大判大13.10.22、高松公判昭和33.2.24)。
  • 女性の陰部に指を挿入する行為(大判大14.12.10、大判大7.8.20)。
  • 女性の意思に反して無理矢理接吻(キス)する行為(広島高裁松江支判昭和27.9.24、東京高判昭和32.1.22他)。

など、それ自体がわいせつ行為である場合にもみとめられます。

わいせつ行為は

わいせつ行為とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的しゅう恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する」行為をいうものと解されています(名古屋高裁金沢支判昭和36.5.2)。

【陰部への接触行為】

電車内で、女子のスカートの上から手の甲で触れた場合、強制わいせつ罪になりますか?
通常、強制わいせつ罪にはなりません。
下着の中に手を差し入れて陰部を直接触るか、下着の上から執拗に弄ぶような場合に強制わいせつ罪に、洋服の上から触れる程度の場合は迷惑防止条例違反となることが一般的です。

強制わいせつ罪の「わいせつ行為」と認定された陰部への接触行為としては

  • 陰部に指を挿入する行為(大判大7.8.10、大判大14.2.10)。
  • 指で陰部を弄ぶ行為(東京高判昭和27.5.8)。
  • 被害者の陰部に自己の陰部を押し当てる行為(東京高判昭和27.5.8)。
  • 被害者の着衣の上から陰部を押しなでる行為(名古屋高裁金沢支判昭和36.5.2)。

【乳房への接触行為】

電車内でコートの上から女子の乳房を触る行為は強制わいせつ罪になりますか?
通常、強制わいせつ罪にはなりません。
この場合には迷惑防止条例違反になるのが一般的です。
電車内で、洋服の中に手を差し入れて直接乳房を触る行為は強制わいせつ罪になりますか?
通常、強制わいせつ罪が成立します。

女子の乳房を弄ぶ行為(大阪地裁堺支判昭和36.4.12)が、わいせつ行為に該当することはもちろんです。
着衣の上からでも、着衣が薄くて直接接触するのと同視できる場合や、着衣が厚くても乳房を執拗に触りこれを弄んだといえる場合には、わいせつ行為と認定することができ、強制わいせつ罪が成立します。

被害者が小学生であって、乳房が未発育である場合にはわいせつ行為に該当しませんか?
大阪地判堺支判は小学校6年生の児童の乳房を弄んだ行為につき「わいせつ行為」と認定した事例で、その程度の年齢であれば、性的な意識が存し、社会通念上も保護に値すると考えられています。
乳房が未発育というだけで、わいせつ行為に該当しないということはできません。
男子の乳房を弄ぶ行為はわいせつ行為に該当しますか?
男子の乳房を弄ぶ行為については、それだけではわいせつ行為と認定し難い場合が多いようです。

【接吻(キス)】

公道で女性に抱きつき無理矢理接吻(キス)する行為は強制わいせつ罪に該当しますか?公道で接吻(キス)を行うということについては、通常の恋人同士も行うことであってわいせつには該当しないと思うのですか。
強制わいせつ罪が成立します。

わいせつ性の概念は、基本的には公然わいせつ罪(刑法174条)やわいせつ物頒布等罪(刑法175条)と同様であるものの、強制わいせつ罪は、被害者の意に反したわいせつ行為を処罰し、本質的に被害者の性的自由・性的感情を保護法益とするものです。
「接吻(キス)行為」は、刑法第174条や同175条の「わいせつ」行為には該当しないとしても、強制わいせつ罪の「わいせつ行為」には該当するとされています(広島高裁松江支判昭和32.4.18他)。

男性に対して無理矢理接吻(キス)する行為も強制わいせつ罪が成立するのでしょうか?
強姦罪と異なり、強制わいせつ罪の被害者は女子に限定されません。
裁判例では、35歳の男が11歳の男の子に無理矢理接吻(キス)した行為は強制わいせつと認めています(大阪地判昭和43.2.6)。
女子を強姦した者が、さらに金品を強奪した場合は何罪が成立しますか?
強姦罪(177条)のほかに強盗罪(236条)が成立し、両者は併合罪となります(最判昭和24.12.24)。強盗罪の長期も強姦罪の長期も有期懲役ですので、20年の1.5倍である30年が長期の量刑となります。

【性交(SEX)等】

女子に対して姦淫がなされた場合には、強姦罪に該当します。
強姦罪の被害者は女子に限られますが、強制わいせつ罪については男子も被害者となり得ます。

  • 女子が男子に対してわいせつな行為を行った場合にも、強制わいせつ罪に該当します。
  • 被害者である男女に強いて性交(SEX)をさせる行為もわいせつ行為に該当します(釧路地裁北見支判昭和53.10.6)。
  • 少年の肛門に指や異物を挿入する行為もわいせつ行為に該当します(東京高判昭和59.6.13)。

【その他】

直接被害者の身体に触れなくても、裸にして写真をとる行為は、強制わいせつ罪を構成します(東京高判昭和29.5.29、東京地判昭和62.9.16)。

被害者女性を裸にして写真撮影する行為について、加害者男性は同性愛者であるため女性の裸に全く興味がなく、裸にしたことに性的意図がなく、報復のために行ったという場合にも強制わいせつ罪が成立しますか?
婦女を脅迫して裸にし、これを写真撮影しても、自己の性欲を刺激、興奮させ、あるいは満足させる性的意図がなく、もっぱら報復、侮辱又は虐待の目的であるときには、強制わいせつ罪は成立しません(最判昭和45.1.29)。
  • 被害者を単に抱きすくめる行為(名古屋地判昭和48.9.28)
  • 男が女の上に馬乗りになる行為(大阪高判昭和29.11.30)等

これらは、強制わいせつ罪の手段としての暴行行為ではあるものの、それだけではわいせつ行為というには足りない場合が多いと思われます。

12歳の女児に対してわいせつ行為を行いましたが、女児の同意を得ていた場合、強制わいせつ罪は成立しますか?
強制わいせつ罪については、相手が13歳未満である場合には、単にわいせつな行為をしただけで成立します。同意の有無は犯罪成立に影響を及ぼしません。
12歳の女児に対して同意を得てわいせつ行為を行った場合に、被害者を13歳以上であると思っていた場合には、強制わいせつ罪は成立しますか?
被害者が13歳未満であることの認識が必要です(最決昭和44.7.25)。 対象者が13歳以上であると誤信してその同意を得てわいせつ行為に及んだところ、実は13歳未満であったという場合は罪となりません。
13歳以上の未成年者の場合には、暴行・脅迫によるものではなく、相手の同意を得ているのであればわいせつなことをしても犯罪にはなりませんか?
強制わいせつ罪にはなりませんが、相手の未成年者が18歳未満の場合には、淫行条例違反などに問われる可能性があります。
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